梅毒は、梅毒トレポネーマに感染して起こる全身性の感染症です。特徴的な皮膚症状が現れますが、治療をしなくても皮膚病変が自然と消失するため、感染に気づかず他人にうつしてしまうケースがあります。治療法が確立している現代でも、注意が必要な疾患です。
近年、梅毒感染者数が世界的に急増、2021年以降日本国内でも、梅毒報告数が大幅に増加しました。
梅毒は早期発見・早期治療が大切です。早期発見・早期治療をするためにも、梅毒の症状、原因と感染経路、検査と治療方法、有効な予防法を知っておきましょう。
目次
梅毒の症状
梅毒は感染してから時間の経過に伴い、「1期」「2期」「3期」「4期」の病期(ステージ)に分けられていました。しかし、現在では、4期というステージは無くなり、脳や心臓血管系に病変が起こる神経梅毒は、3期の活動性梅毒と考えられています。
現代は医療の進歩・発展により、3期以降の梅毒患者はほとんど見られなくなりました。しかし、ここ数年の感染拡大・感染者急増により、3期以降の梅毒症例も増加する可能性が危惧されています。
梅毒の症状を写真でわかりやすく
梅毒の症状を写真で見たいという方は非常に多いです。
梅毒2期は、特徴的な発疹が現れます。それが、症例写真の”バラ疹(ばらしん)”です。淡い赤色の発疹が「バラの花びら」に似ていることから、この名前がつけられました。
バラ疹は、手のひらや足、体幹部、顔など全身的に見られることが多く、発症から数週間から1カ月で消失します。治療をしなくとも自然消失するため、「治った」と勘違いしてしまう方が多いです。
梅毒は自然治癒しないだけでなく、放置すると自ら感染源となったり、重症化したりします。気になる症状がある方は、早めに梅毒検査や性感染症検査を受けましょう。
梅毒の初期症状
梅毒の初期症状は下記です。感染から3週間程度経過すると、梅毒1期の初期症状が現れます。
初期硬結 | 感染部位(性器や肛門、口唇など)に硬いしこりができる(しょきこうけつ) |
---|---|
硬性下疳 | しこりが破裂して潰瘍(かいよう)やただれが起こる(こうせいげかん) |
無痛性横痃 | ソケイ部など、付近のリンパ節が腫れる。痛みはない(むつうせいおうげん) |
梅毒の初期に起こる初期硬結は、痛みやかゆみを伴わないケースが多いです。また、治療をしなくても”自然に消える”ため、感染に気づかず、病期が進行したり、他人に感染させたりすることも少なくありません。
疑わしい行為や危険な性行為に心当たりのある方は、些細な違和感でも、積極的に性感染症検査を受けるようにしてください。
男性の初期症状
亀頭や陰茎など、性器周辺の皮膚に硬いしこり(初期硬結)ができて、それが自覚症状となるケースが多いです。感染部位に症状が起こるため、性器以外にも、口唇・口腔内などにも発症します。
女性の初期症状
大陰唇・小陰唇を含む、女性器周辺、膣内に初期硬結を感じ、検査を受けるきっかけにつながります。オーラルセックスが一般化した近年では、口唇・口腔内に異変を感じる方も多いです。
また、膣内のしこりだと本人も気づきづらく、早期発見が遅れ、他者への感染を広める”感染源”となる可能性もあります。
梅毒2期の症状
梅毒2期の特徴的な症状は下記です。感染から3カ月~3年経過すると、梅毒2期の症状が現れます。
バラ疹 | 手のひら、足の裏など、身体に淡い赤色の発疹ができる |
---|---|
扁平コンジローマ | 平らな丘疹(きゅうしん)が外陰部、肛門周囲、脇の下などにできる |
粘膜斑 | 平らか少し隆起した、白や灰色の病変が喉や口腔内の粘膜にできる |
2期に進行すると、原因菌である梅毒トレポネーマが全身に広がり、皮膚や粘膜に特徴的な皮膚症状を引き起こします。
バラ疹は、手や足の裏を含む広範囲に見られ、バラの花びらのような淡い赤い斑点が特徴です。
扁平コンジローマには、梅毒トレポネーマが多数存在するため、極めて感染力が強く、接触すると簡単に伝播します。
また、皮膚症状にとどまらず、全身性リンパ節腫脹が起こり、発熱、倦怠感、頭痛、難聴など、多彩な症状が見られることもあります。
ただし、梅毒2期で起こる症状も、無治療のまま、数日から数週間で消失するケースが多いです。少しでも不安な症状、危険な性行為の記憶がある方は、梅毒を含む性感染症検査を受けましょう。
梅毒3期の症状
梅毒3期の特徴的な症状は下記です。
ゴム腫 | 皮膚、粘膜、骨などに周辺組織の破壊を伴った肉芽種性病変(ゴムのようなしこり)ができる |
---|
梅毒感染を放置し、数年が経過すると梅毒3期へ進行します。現在日本国内では、3期まで進行した梅毒の症例はほとんど報告されていないのが現状です。しかし、近年の爆発的な流行、患者数の推移を考えると、日本国内でも3期梅毒の報告が増加する可能性も否定できません。
ゴム腫の他に、心血管梅毒、晩期神経梅毒など、致死的症状を起こすいわゆる梅毒末期となると、神経障害を起こすリスクが高くなり、死に至るケースもあります。
気になる症状や不安な性行為などがあった場合は放置せずに、適切な検査を受け、原因を突き止め、治療につなげることがもっとも重要です。
梅毒の原因
梅毒の原因は”梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)”という病原菌です。有効な治療法が見つかるまで、梅毒は「死に至る病」として恐れられきました。
1928年、有効な治療薬である抗菌薬”ペニシリン”の発見・普及により、感染者数は激減。しかし、1990年頃から世界的に再燃の兆しを見せ、コロナ禍で一時は減少したものの、2021年から再び増加しています。
2022年、世界保健機関(WHO)は、「2030年までに成人梅毒の年間感染者数を90%減少させる」という目標を発表しました。
参考:公益社団法人 日本WHO協会|性感染症の大幅な増加が明らかに
参考:国立感染症研究所 感染症疫学センター|梅毒2023年現在
梅毒の感染経路
梅毒の感染経路は、あらゆる性行為です。
梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマは、精液や膣分泌液、血液、傷から分泌される浸出液などの体液に含まれます。
粘膜の接触を伴う、あらゆる性的な行為によって感染し、膣性交(セックス)だけでなく、肛門性交(アナルセックス)、オーラルセックス(フェラチオ・クンニリングス等)、キスなどによって感染します。
また、妊娠中の方が梅毒に感染していると、経胎盤感染による母子感染のリスクが高まります。経胎盤感染を起こすと、流産や早産、死産の原因となるだけでなく、新生児が梅毒に感染した状態で生まれる”先天梅毒”になります。
梅毒の潜伏期間
梅毒の潜伏期間は、感染後1~13週間程度です。ここでいう潜伏期間とは、梅毒トレポネーマに感染してから発症するまでの期間を指します。
梅毒の潜伏期間は、個人差が大きいため幅広く設定されており、感染後2週間で症状が現れる人いれば、12週間後に自覚症状が起こるケースなど多様です。
梅毒の検査
梅毒の検査は、血液検査で行います。梅毒反応を見る血液検査として、2種の検査を行いますが、採血は一度で済むのでご安心ください。
梅毒検査の時期
梅毒は、感染機会(疑わしい性行為)があった後、すぐには検査ができません。感染から最低でも3週間以上経たないと検査に必要な”抗体”ができないからです。抗体ができるまでに検査をしても正確な結果が得られず、この検査不能な期間を「ウインドウピリオド」といいます。
そのため、梅毒感染が疑われる性行為があった方は、その性行為から1カ月後を目処に血液検査を行いましょう。
梅毒検査の種類
梅毒検査は、RPR法とTPHA法の2種類の検査結果によって診断します。
RPR法は梅毒の活動性が分かり、TPHA法は梅毒に特異的な検査で過去の感染も含めて分かる検査です。それぞれ異なる項目で結果を得て、梅毒診断の指標とします。
梅毒に感染した過去があると、治療後、完治したとしてもTPHA法では陽性(+)の結果が一生出続けるので要注意です。
RPR法 | TPHA法 | 結果 |
---|---|---|
陽性(+) | 陽性(+) | 感染している |
陰性(-) | 陰性(-) | 感染していない |
陽性(+) | 陰性(-) | 初期感染の可能性あり 偽陽性(感染していない) |
陰性(-) | 陽性(+) | 梅毒の治療後 初期感染の可能性あり 偽陽性(感染していない) |
池袋駅0分!即日梅毒検査が可能
池袋マイケアヒルズタワークリニックは、梅毒検査ができる医療機関です。
保険証不要のため、匿名検査ができます。お呼び出しは番号制・待合室も仕切りで区切るなど、プライバシーに配慮した空間でお待ちしておりますので、バレずに検査を受けたい方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。
梅毒検査(TPのみ)1,900円
感染の機会から6週間
経過した方におすすめです。(TPのみ)
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 感染の機会から6週間経過すれば受けられます。
- 検査結果
- 2~5日後(Web確認可)
梅毒 定量検査7,700円
急増中の梅毒。
感染歴のある方も受けられる検査です。
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 定性+の場合。
- 検査結果
- 4~7日後(Web確認可)
3項目血液チェックセット8,400円
基本的な血液項目をまとめたセット。
- 検査項目
- クラミジア(性器) クラミジア(のど) クラミジア(肛門) 淋菌(性器) 淋菌(のど) 淋菌(肛門) トリコモナス カンジダ 一般細菌 HIV 梅毒 B型肝炎 C型肝炎 マイコプラズマ(のど) マイコプラズマ(性器) ウレアプラズマ(性器) ウレアプラズマ(のど)
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 感染の機会から2ヵ月経過すれば受けられます。
- 検査結果
- 2~5日後(Web確認可)
梅毒の治療
梅毒の治療は、抗菌薬を用いた薬物療法が基本です。
日本での梅毒の薬物療法というと、経口合成ペニシリン剤(アモキシシリンなど)の内服が一般的です。しかし、海外では、ベンジルペニシリンの筋肉注射が一般的となっており、国内でも筋肉注射による梅毒治療が注目を集めています。
その理由として、内服1日3回2週間と注射1回の効果がほぼ同等であり、飲み忘れるリスクがないなど、注射による治療は患者様にとって利便性が高いからです。
池袋マイケアヒルズタワークリニックは、筋肉注射・内服薬、双方の治療薬で梅毒治療が行えます。ペニシリン製剤にアレルギーがある方も、治療薬のご相談を承っております。
梅毒の治療期間
梅毒の治療期間は、病期(ステージ)によって大きく異なります。2期以降に進行すると、治療期間も長く必要です。治療期間が短く済む、梅毒1期のうちに治療を開始しましょう。
各ステージの治療期間は、日本性感染症学会の治療ガイドラインに準拠します。
- 梅毒1期…薬物療法 2~4週間
- 梅毒2期…内服治療 4~8週間
梅毒3期以降の早期神経梅毒は内服、後期神経梅毒はベンジルペニシリンカリウム注射で治療を行います。
参考:日本性感染症学会 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2020
池袋マイケアヒルズタワークリニックの梅毒治療
梅毒治療は、早期開始が大切です。池袋マイケアヒルズタワークリニックは、筋肉注射と内服薬の2つの治療法で梅毒が治療できます。
即日梅毒検査もできますので、お心あたりの方は当クリニックにご相談ください。
梅毒の予防薬
梅毒を始めとする細菌性性感染症の予防に有効なワクチンはなく、正しいコンドームの着用がもっとも有効な予防法でした。
2024年 アメリカ疾病対策予防センター(CDC)が、不安な性行為の後72時間以内に内服する、性感染症予防薬”Doxy PEP(ドキシペップ)”の検証結果を発表し、その効果が実証されました。梅毒は87%もの確率で感染予防に成功しています。
もちろん、予防薬も100%の予防効果があるわけではありません。感染の可能性がある不安な性行為があったら、72時間以内に性感染症予防薬を内服し、ウインドウピリオド経過後に性病検査を受けることをおすすめします。
性病予防薬”Doxy PEP(ドキシペップ)”は、まだ日本国内に普及しておらず、取り扱うクリニックもわずかです。池袋マイケアヒルズタワークリニックは、Doxy PEP(ドキシペップ)を処方できる医療機関ですので、お気軽にご相談ください。
参考:細菌性性感染症予防のためのドキシサイクリン曝露後予防法の使用に関する CDC 臨床ガイドライン
料金表
梅毒検査の料金表
梅毒検査(TPのみ)1,900円
感染の機会から6週間
経過した方におすすめです。(TPのみ)
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 感染の機会から6週間経過すれば受けられます。
- 検査結果
- 2~5日後(Web確認可)
梅毒 定量検査7,700円
急増中の梅毒。
感染歴のある方も受けられる検査です。
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 定性+の場合。
- 検査結果
- 4~7日後(Web確認可)
3項目血液チェックセット8,400円
基本的な血液項目をまとめたセット。
- 検査項目
- クラミジア(性器) クラミジア(のど) クラミジア(肛門) 淋菌(性器) 淋菌(のど) 淋菌(肛門) トリコモナス カンジダ 一般細菌 HIV 梅毒 B型肝炎 C型肝炎 マイコプラズマ(のど) マイコプラズマ(性器) ウレアプラズマ(性器) ウレアプラズマ(のど)
- 検査方法
- 血液
- 検査時期
- 感染の機会から2ヵ月経過すれば受けられます。
- 検査結果
- 2~5日後(Web確認可)
梅毒治療の料金表
梅毒予防薬の料金表
梅毒の検査・治療に関するよくある質問
梅毒の完治後も、検査で陽性になるのはなぜですか?
梅毒に感染すると、体内に原因菌である梅毒トレポネーマに対する抗体ができるからです。一度でも梅毒に感染すると、TP法検査で一生涯「陽性反応」を示します。
パートナーが梅毒に感染しましたが、私は無症状です。検査はしなくてもいいですか?
梅毒はあらゆる性行為で感染し、約3割の確率でパートナーにうつしてしまう性病です。自覚症状がなくても、感染している可能性があるので、検査を受けることをおすすめします。
梅毒はコンドームの装着で予防できますか?
梅毒に限らず、性感染症はコンドームの着用だけで100%予防できません。不安な性行為があったら、検査可能な期間が経過後、性病検査を受けましょう。
梅毒を予防できるワクチンはありますか?
いいえ、梅毒を予防するためのワクチンはありません。しかし、梅毒、淋病、クラミジアは、Doxy PEP(ドキシペップ)という性病予防薬で、高い予防効果が期待できます。
梅毒になると鼻が落ちるって本当ですか?
抗菌薬ペニシリンが発見されるまでは、有効な治療法がなく、3期以降の梅毒患者のゴム腫から「鼻が落ちる」と言われていました。ゴム腫は骨や皮膚組織を破壊し、鼻の欠損を引き起こすことがあるからです。