
「HIV」と「エイズ」は、同じではありません。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はウイルスの名前で、感染すると免疫の働きが徐々に弱まります。免疫力が大きく低下し、通常はかからない感染症やがんを発症した状態がエイズ(後天性免疫不全症候群)です。
HIVに感染しても、すぐに症状が出るとは限りません。そのため、感染に気づかないまま過ごす人もおり、中にはエイズを発症してはじめてHIV感染に気づくケースもあります。
この記事では、HIV感染やエイズに気づくきっかけ、HIV検査の重要性、検査のタイミングと方法をわかりやすく解説します。自分や大切な人の健康を守るために、ぜひご覧ください。
目次
エイズに気づくきっかけ

エイズを発症してはじめて、自分がHIVに感染していたことに気づくケースはめずらしくありません。HIVに感染しても、すぐにエイズを発症するわけではなく、しばらくは症状のない期間が続くためです。
HIV感染の初期には、ほとんど症状が出ない場合が多く、一時的に風邪のような症状が現れても自然に治まります。その後、無症候期(症状がない期間)が数年から10年以上続くこともあり、感染に気づかないまま生活している人も少なくありません。
こうしてHIV感染が進行し、免疫力が著しく低下してから、エイズを発症することで感染に気づく場合もあります。
以下のような症状がエイズに気づくきっかけになります。
〔エイズの指標疾患(※1)〕
- カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)
- ニューモシスチス肺炎
- サイトメガロウイルス感染症
- HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎
- 腫瘍(カポジ肉腫、原発性脳リンパ腫など) など
参考:(※1)厚生労働省|9 後天性免疫不全症候群
HIV感染に気づくよくあるきっかけは?
HIV感染症は、治療開始が早ければ早いほど免疫力を保ち健康な生活を続けやすくなります。そのため、早い段階で気付くことが何よりも重要です。
HIV感染に気づくきっかけには、次のようなものがあります。
- 風邪のような症状が長引く
- パートナーが陽性だとわかった
- 他の感染症にかかった
- 健康診断で異常値を指摘された
- 献血後の通知を受け、不安を感じた
風邪のような症状が長引いた(発熱・倦怠感・下痢・口内炎など)
HIV感染後2〜6週間ほどで、一時的に風邪のような症状(急性HIV感染症状)が現れることがあります。代表的な症状には、発熱、倦怠感、下痢、口内炎、喉の痛み、筋肉痛、リンパ節の腫れなどが含まれます。
これらの症状は一般的な風邪や他のウイルス感染症と区別がつきにくいため、HIV感染とは気づかれにくいことが多いのです。しかし、あまりに症状が長引いた際は病院を受診する方は少なくありません。さまざまな検査の結果、HIV感染に気づくことがあります。
パートナーがHIV陽性だと判明した
パートナーがHIVに感染したことが、自身の感染を疑うきっかけになることもあります。
HIV感染症は性行為によって感染する病気です。コンドームを使用しても、確実に感染が防げるわけではないので、パートナーと一緒に検査をおすすめします。
他の性感染症にかかった
何らかの性病への感染をきっかけに、HIV感染に疑いを持つことがあります。
性病に感染し粘膜が炎症を起こしたり傷ついたりすると、HIVが体内に入りやすくなるので、検査や治療の際に医師からHIV検査をすすめられることもあります。
健康診断で異常値を指摘された
健康診断で見つかった白血球数や免疫に関わる数値の異常などをきっかけに、HIV感染に気づくことがあります。また、原因不明の貧血や体重減少、長引くリンパ節の腫れなどが健診で確認され、詳しい検査に進んだ結果、HIV感染が見つかるケースもあります。
献血後の通知で不安を感じた
献血された血液は感染症スクリーニング検査(初期検査)を行い、「B型肝炎」「C型肝炎」「梅毒」「HTLV-1抗体」の数値に異常が認められた方に通知が届きます(※2)。
HIVの検査結果は分かりませんが、ほかの病気の感染や数値異常を知らされたことに不安を感じて医療機関でHIV検査を受けた結果、感染が判明するケースもあります。
参考:(※2)日本赤十字社|よくあるご質問 検査について
もしかしてエイズかも?不安に思ったタイミングで検査を

HIV感染に早く気づき治療を始められれば、エイズの発症を防ぐことができ、それまでと変わらない生活が続けられます。
反対に、気づくのが遅れると免疫力が低下し、健康な人ならかからない感染症やがんを発症し、命に関わるリスクも高まります。
HIV感染は、見た目や体調ではわかりません。早期発見・早期治療のために、定期的な検査をこころがけてください。
「自分は大丈夫」は危険!
「不特定多数との性行為はしていないから大丈夫」「もし感染していたら怖いから知りたくない」「検査の受け方がわからない」などの理由から、HIV検査を受けない人は多いです。
こうした背景には、次のような思い込みや不安が影響していることがあります。
- HIVに関する正しい情報や知識が不足している
- 「自分は感染していないはず」という根拠のない自信
- 万が一感染していた場合に向き合うのが怖いという強い不安
「たぶん大丈夫」よりも、「念のため検査を受けておく」その一歩が、自分と大切な人を守ります。
HIV感染症の治療は早期発見がカギ!

以前に比べHIV感染症の治療は大きく進歩しており、毎日薬をきちんと服用すれば、体内のウイルス量を検出限界未満に抑えることができます。この状態では、他人への感染リスクがなくなることが科学的に証明されており、厚生労働省のサイトでも「U=U(Undetectable=Untransmittable)=検出不能なら感染しない」という考え方が紹介されています。
HIV感染を早期に発見して治療を始めることには、次のような大きなメリットがあります。
〔エイズの発症を防げる〕
早期治療を始めることで免疫力が維持され、免疫機能の低下を防げます。
〔他人にうつさずにすむ〕
ウイルス量が検出不能なレベルまで下がれば、性行為などによって他の人に感染させるリスクをなくせます。
〔不安が軽くなる〕
感染していなければ安心できますし、もし感染が分かっても、早期治療が叶います。
HIVの感染初期はほとんど症状が出ないため、自分ではなかなか気づきにくいという特徴があります。だからこそ、少しでも思い当たる節があるなら、ためらわずに検査を受けましょう。
池袋マイケアヒルズタワークリニックのHIV検査のご案内
HIV検査を受けたいと思っても、「知り合いに会ったらどうしよう」と不安に感じる方も少なくありません。
池袋マイケアヒルズタワークリニックでは、「匿名で検査したい」というご要望にお応えし、安心して検査を受けていただける環境をご用意しています。
当院のHIV検査には、次のような特長があります。
〔スクリーニング検査・確認検査の両方に対応〕
スクリーニング検査で陽性反応が出た場合、確認検査(確定診断のための検査)を行うことでよりくわしく感染の有無を確認します。
〔プライバシーへの配慮〕
ご来院から診察、検査まで、お帰りいただくまで、他の方と顔を合わせないよう導線を確保。併せて、個室対応や匿名での検査など、徹底的にプライバシーに配慮しております。
〔PrEP(プレップ)の処方が可能〕
HIVへの感染リスクを大幅に低減できる、曝露前予防内服薬「PrEP(プレップ)」の処方が可能です。
《HIV感染の予防薬PrEP(プレップ)についてくわしくはこちら》
よくあるご質問
健康診断や献血でHIVの感染に気づくことはありますか?
異常を知るきっかけになる場合はありますが、HIVの感染の発覚までいたるケースはまずありません。HIV感染の確定には専用の血液検査が必要だからです。
HIV感染の有無を正確に知りたい場合は、医療機関等でHIV検査を受けましょう。
コンドームでHIV感染は防げますか?
コンドームを正しく使えば、感染リスクを大幅に減らすことができます。しかし、予防率が100%になるわけではありません。
より確実な予防のために、HIV感染予防薬PrEP(プレップ)など、他の予防法と併用することをおすすめします。
HIV感染の初期症状と風邪の症状を見分ける方法は?
HIV感染症の初期症状は風邪と非常に似ているため、症状だけで区別することは困難です。
実際に検査して結果が出るまで判断はできないので、少しでも感染リスクがあると感じた場合は検査を受けることをおすすめします。
男性のエイズ患者が多いのはなぜですか?
男性患者が多いのは、男性同士の性行為によるHIV感染のリスクが高いからです。
妊娠を考慮する必要がないためコンドームを使用しないことや、アナルセックスによって肛門が損傷し、血液の接触が起こりやすいことなどが、男性同士の性行為がHIV感染のリスクが高い原因と考えられています。